まとめと課題

   不正工作は確実に見抜くことができる。

   不正を起こさせない現場管理。


袖原3遺跡、上高森遺跡の検証調査によって出土した、石器あわせて6点は、元々、その地層に含まれていたものではなかったことが明確になりました。
石器も地層を構成する堆積物の一つという視点
(註1)で、調査を進めれば、数十万年間、或いは数万年間埋まっていたものと、後からの工作で埋められたものとの差は歴然であります。不正は確実に見抜くことができるとの確信を抱くことができました。
これは、実験結果からも明白です。発掘調査ではこういった不正がなかったことを証明する手続きが必要となりますが、これは、やはり、石器を取り上げた面に、その石器の裏面の型が付いているかどうかで判断可能だろうと思われます。不正工作があったとすれば、石器の剥離面と同じ型跡は付きようがないと思われます(インプリントがあったとされる上高森遺跡の埋納遺構2に不正があったのであれば、石器の型に土の潰れや汚れが観察されたはずである。埋納遺構は穴を掘って石器を並べて埋めたものであり、柔らかく平坦な穴の底に並べて上から圧力をかければ型が付くと思いますが、よく観察すれば土の汚れや、不自然な潰れが観察されたものと思われます) 。
不正を起こさせない努力も必要と考えられます。完全に外部と遮断し、セキュリティで24時間保障するやり方もあるでしょうが、国民共有の財産という観点から、こういった調査は望ましくはないし、このための経費も莫大なものになると予想されます。調査員が不在となる時間帯はシートで覆ってその証拠写真を撮って、不在時間帯にシートが剥がされなかったかどうかをチェックするという、袖原3・上高森方式でも十分に機能し得たと考えます。
発掘調査は互いの信頼関係の上に立って行われるのであり、調査中に不正を行わないように互いに監視しあうことは、文言としてはあっても、現実的ではないと思われます。不正は必ず分かるのであり、信頼関係を損ねるやり方は必要ではないと思います。
現場管理の問題は旧石器遺跡の問題だけではありません。。2000年11月までは、どこの現場でも、遺物の盗難防止に腐心してきたはずです。遺物の盗難を防ぐ手だてを含め、有効、安価の観点でこれからも、研究を進めていかなくてはならないと考えます。

(1)「第14回東北日本の旧石器文化を語る会 発表・討論記録」P56 菊池強一氏の発言