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仙台城本丸跡石垣修復工事 現地見学会 <参加報告>

 仙台城本丸跡北東部の石垣修復工事現場で6月3日、仙台市建設局百年の杜推進部公園課と仙台市教育委員会文化財課による現地見学会が開かれた。当日は市民や歴史学関係者ら約630人が駆けつけ、担当職員らの説明を受けた。このうち文化財課職員が発掘調査で見つかった1期、2期、3期石垣の石材の形状や積み方の違いなどについて解説、公園課職員からは現在進行中の石積み工事の進行状況や進め方などについて説明があった。現場では市民から具体的な工法についての質問が相次ぎ、公園課職員が困惑する一幕もみられるなど、石垣修復への市民の関心の高さをうかがわせた。

発掘調査を行った文化財課職員による説明風景。正面に見えているのが1期石垣で、左上方に2期石垣、一番外側に3期石垣が見えている。3時期の石垣を一度に見ることが出来る重要な地点で、石垣構築技術の進歩の様子が良く分かる。

3期石垣の修復作業状況。赤茶色の石材が旧石材、ねずみ色の石材が新補材(中国福建省産)。下層部は石材の破損率が高く、新補材の割合が高くなっている。新補材は隣り合う石材の形状に合わせて手作業で整形を加えているという。旧石材が裏込め石に食い込む四角錘状の形状をしているのに対し、新補材は直方体のままのものが多いことから、歴史学者らから伝統工法を無視しているとの指摘が出ている。修復作業にあたっている公園課では下層部の強度を高めるためにやや大きめの新補材を使用する必要があると説明している。

3期石垣の修復作業状況。左は北東角部、右は北面の様子。破損していたために新補材と交換された北東角石は重量6トン。角石の位置は特に精密さが求められることから、設置には3日を要したという。周囲には石垣表面の勾配の基準となる丁張りと呼ばれるアルミ製の板が設置されている。

3期石垣北面の様子。石材の産地・形状や石積み工事の進め方などについて市民から質問が相次いだ。写真右後方に見えている大型クレーンを移動させ、作業用のスペースを確保するためにこの後石垣前面が元の状態に埋め戻される。写真左のほぼ中央に埋め戻しラインを示す水糸が見える。

3期石垣の石材調査。着色されている石材は何らかの損傷を受けていると判断されたもの。谷地形のある中央下部付近に破損石材が多く、大きな荷重を受けていたことが分かる。
再利用(白):現在の状態で同じ位置に使用できる石材
補修再利用(黄):軽微な補修を施し、同じ位置に使用できる石材
加工再利用(青):加工を施すことにより他の位置に使用できる石材
再利用不可(赤):欠損部の石垣や補強石として再利用する石材

角石の滑り止めおよび勾配調整に使用されたと思われるクサビ状敷金。左が発掘調査で発見されたもの、右が成分分析を行い同じ材質で再現したもの。さまざまな大きさがあるが、大きく分けて3タイプがある。

石を積んだ西暦と、新補材は「新」、再加工石は「再」の文字を刻印したものを埋め込む。 解体しないラインと修復するラインの明示に銅板を線状に配置した。石垣の表面から見えないよう、石材先端に配置。

石垣修復にあたっている公園化職員による説明風景。 一部に破損がみられた旧石材を別の場所に再利用できるよう再加工したもの。


仙台市建設局百年の杜推進部公園課2001
「仙台城石垣修復工事現地見学会資料」より