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仙台城本丸跡石垣の保存活用と艮櫓再建計画について



 仙台城本丸跡の石垣修復に伴う発掘調査では、これまで知られていなかった三時期の石垣の変遷が明らかになりました。当時最高水準の技術によって造られた石垣は、地震による倒壊と修復を繰り返した、災害との戦いの歴史でもあったのです。
 石垣の変遷が明らかになったことで、石垣修復後に予定されている艮櫓の再建位置をめぐる激しい議論が展開され、もうすぐ一年が経とうとしています。十月にはついに藤井黎市長が最終判断を下すと聞きます。
 計画では現存石垣の北東角に艮櫓を再建することになっていましたが、発掘調査によって実際は計画より七メートル以上後退した位置に再建すべきであることが明らかになりました。また計画通りに再建された場合、基礎工事によって現存石垣の内側で発見された伊達政宗が築いた石垣が破壊されることも明らかになったのです。
 しかし、調査成果に基づいて計画を変更すれば再建した艮櫓は市街地からは見えなくなるため、観光資源として仙台城の復元を後押ししてきた仙台商工会議所を中心とする仙台の商業界は、依然として計画どおり市街地から見える位置での再建を訴えています。
 当時の艮櫓を知る資料は本丸を描いた絵図一枚のみであり、その復元内容自体が学術的論拠に乏しく、細部にわたっての忠実な復元は困難です。現計画位置で艮櫓を今強引に再建することは歴史の捏造にほかならないと考えます。
 歴史上、現存石垣の上に櫓が建てられたことは一度もありません。修復のたびに拡張を重ねた石垣は背後に大量の盛土を抱えていたため、当時の人は大規模建築が構造上不可能であることを良く知っていたのでしょう。
 現存石垣の上に艮櫓を再建する仙台市の計画では、基礎工事のために直径二メートルのコンクリート柱を六本岩盤まで貫通させるというパイル工法を採用しています。現代のコンクリート柱が政宗の石垣を破壊するのです。それだけでなく、もうひとつ重要と考えられるのは、艮櫓の再建計画自体が伝統工法を無視したものであり、復元とは名ばかりの限りなく現代建築に近いものであるということです。
 史実に基づかない史跡復元の意義は皆無です。ましてや当時の技術を再現できないのだとすれば、将来の市民のためにも現時点での艮櫓の再建は断念すべきです。現存石垣の内側で発見された政宗の石垣には地下階段を整備し、その上で史実に限りなく忠実な復元が可能な大手門の再建を提案します。来訪者には荘厳な大手門をくぐって政宗の石垣を観に行ってもらいたいのです。本丸は荒城の月に詠われた趣のある景観を残してほしいと思います。
 また、市街地中心部では芭蕉の辻周辺の景観整備を進め、付近に仙台の商業や町人文化を再現する資料館の建設も提案します。市民にとって仙台の歴史がより身近なものとなるよう配慮していただきたいのです。
私たちは、高く聳える櫓が見たいのではありません。仙台市民、宮城県民の誇りである先人の知恵と技術に触れたいのです。

2000.09.17 管理人