MIYAGI ARCHAEOLOGY INFORMATION Vol.27 2002.7.20



仙台市宮城野区 沼向(ぬまむかい)遺跡(現地説明会:2001.09.22)

 沼向遺跡は仙台市北東端の海岸部に位置している。これまで遺跡の実態は明らかでなかったが、仙台市教育委員会が土地区画整理事業に伴って1994年度から進めている発掘調査で、古墳時代前期を中心とする大規模な集落跡の存在が明らかとなった。遺跡東側の浜堤上には土壙墓、方形周溝墓、方墳からなる古墳時代前期から中期にかけての墓域が形成され、北側の後背湿地には古墳時代後期以前の3時期にわたる水田区画や水路跡などが形成されていた。東側では古墳時代前期・後期の竪穴建物跡と弥生時代中期・後期の遺物包含層も検出され、製塩土器などが出土している。
 第8〜10次調査(1996〜2001)によって東西160m、南北80m以上に及ぶ古墳時代前期の居住域が確認された。確認されている竪穴建物跡は35軒にのぼり、関東や東海地方の影響を受けた遺物も残されていることなどから、古墳時代前期における七北田川水系の河口に位置する拠点集落であったと考えられる。
 これまで調査された古墳・方形周溝墓・土壙墓群と水田・水路跡などとあわせ、集落内の同時期の居住域・墓域・食料生産域が調査された例として貴重である。今後の調査で古墳時代中期の居住域と後期の墓域が確認されれば、古墳時代から平安時代にかけての集落内の遺構配置や土地利用とその変遷といった具体的な生活環境を復元できる可能性が高い。また、古墳時代前期の竪穴建物跡床面直上の一括資料に恵まれており、仙台平野における当該期の土器編年の基準資料として注目される。