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高まり見せる市民の文化財保護意識

―古代都市多賀城、仙台城跡から都市景観まで―

 文化財保護を訴える市民の動きが活発化している。
 多賀城市内の遺跡の保存と活用方法を市民レベルで考えようと設立された「多賀城史跡・名所をいかす会(本郷俊夫会長)」は2月3日、陸奥国府多賀城の正面に広がる市川橋遺跡で見つかった古代のメーンストリート「南北大路」と「東西大路」の交差点部分の保存・活用を求める要望書を鈴木和夫多賀城市長に提出。碁盤の目のように区画された「方格地割」による街並みの様子が発掘調査によって明らかになったのは古代地方都市の中では多賀城だけであることを指摘し、交差点部分の保存と史跡公園整備などを求めた。
 また、仙台市が仙台城本丸跡で進める予定の艮櫓(うしとらやぐら)建設計画では、築城期の石垣が破壊される事実が指摘されたため、「仙台郷土研究会(渡辺信夫会長)」など在仙の史学研究六団体が石垣の保存を市に要望。仙台城跡の石垣の歴史的価値を知ってもらおうと、1月30日に仙台郷土研究会が開催したシンポジウム「仙台城石垣の保存について」には会場を埋め尽くす300人余りの市民が駆けつけ、文化財に対する関心の高さを窺わせた。
 失われた文化財の復元を目指す動きもある。藩政時代以降、仙台の城下町を縦横に流れ、庶民の生活用水として重要な役割を果たした「四ツ谷用水」を現代によみがえらせようと、「仙台・水の文化史研究会(佐藤昭典会長)」のメンバーを中心に商店主、教師、主婦らによって2月6日、「四ツ谷用水復活市民の会」が結成された。会では水辺がもたらすリラクゼーション(くつろぎ)効果や災害時の用水確保も期待しており、水文化の再生・創造を目指して、市民の幅広い参加を呼びかけている。文化財保護と自然環境保全は一体となって進められるべきものである。
 仙台を代表する青葉通の街並について考えようと2月4日、仙台市は「街並み景観向上調査団」と名付けたワークショップを開催。市民に実際に青葉通を歩いてもらった上で、問題点や杜の都にふさわしい景観の在り方について意見を出し合い、将来の街並み作りに反映させるという。
 文化財保護も自然環境保全も、街づくりの一環と言っていいだろう。行政の側からも市民の側からも、主役は私たち市民であるという認識が徐々に高まりつつあるようである。