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考古学トピックス2002


■ 多様な観点から考古学を再考する

「多様な観点から考古学を再考する」と題する公開講座が2002年夏から秋にかけて8回にわたり九州大学で開催された。

・田中良之教授
「ここ十年近く、考古学に違和感を感じている。すべて分かったような断言口調は、あまり信用しない方がいい。」
「戦前の皇国史観から解放されたはずの考古学者が、自らナショナリズムに陥っている。」
・岩永省三教授
「都市は商工業と農業の分業が発達した後に出現する。古墳時代でも都市の遺跡はまだない。」
「日本での国家や都市の成立は7世紀」
・宮本一夫助教授
「野生種がない日本に稲が伝わったと確実に言えるのは縄文後期の朝鮮半島から北部九州へのルート」
「プラントオパールは土中で動いている可能性があり、慎重に扱うべき」
・溝口孝司助教授
「1980年代に、大規模遺跡の保存のためには考古学者が大げさに発言してもいいかのような風潮が広がった」
「現在の研究水準でどこまで言えるのか見直してみる必要があると考え、今回の講座を企画した」
「ある考古学者が分かりやすく描いた一つの解釈が、事実であるかのように流布する現状は、市民の想像力をむしろ貧しくしている」
・記者
「考古学の成果を厳格に解釈した学説が多く示された講座で、その批判は"ロマン"や"最古・最大"を求めがちな日本の考古学報道にも向けられていた。旧石器ねつ造事件を許した甘い土壌をどう改善するか、マスコミの課題も示されたように感じた」

河北新報 2002.12.03 「最大・最古」乱発危ぐ 九大が講座 考古学の現状を検証


■ 「3万年前以前」の石器はすべて捏造と断定

 旧石器遺跡捏造事件を受け、遺跡の価値を確認するために行われていた山田上ノ台遺跡の第3次発掘調査は12月2日に作業が終了した。今回の調査で、後期旧石器時代の地層からはナイフ形石器など計143点が出土し、山田上ノ台遺跡が縄文時代の遺跡であるとともに、後期旧石器時代の遺跡であることがあらためて確認された。一方、1次調査で石器が出土した3万年前以前の地層からは、新たな石器の出土はなかった。調査指導委員会(委員長・白石浩之愛知学院大教授)は今回の調査結果や石器の検証結果などから、1次調査で出土し、3万年前以前とされた石器はすべて捏造であったと断定。後期旧石器時代の石器については、不自然な点のみられる石器が1次調査の2か所の石器集中部に限られることを確認し、今回出土した後期旧石器との整合性などから、2か所以外から出土した後期旧石器については、学術資料として使用できるとの結論を出した。

仙台市教育委員会2002「山田上ノ台遺跡第3次発掘調査現地説明会資料(中間報告)」
河北新報 2002.12.03 仙台・山田上ノ台遺跡 「中期旧石器」の認定困難 再発掘終了で調査指導委 80年出土中期旧石器 全部ねつ造と断定
>>>現説レポート


■ 奈良・平城宮跡整備8億1500万円 大極殿復元10億円

12月20日に各省庁に内示された平成15年度一般会計予算の財務省原案で、国直轄事業として奈良・平城宮跡の整備費に8億1500万円(今年度当初予算と同額)を計上。また同日、今年度補正予算案も閣議決定され、平城宮跡整備費の内訳で第一次大極殿の復元に10億円の措置がとられた。平城宮跡の保存活用については、平城遷都1300年となる2010年に向け、奈良県が記念事業を推進。事業のシンボル的位置付けとなる第一次大極殿正殿の復元工事は昨年着工された。その他、キトラ古墳の保存修理に1億1100万円、歴史的風土を保全する古都保存事業には、史跡の土地買収費として奈良・京都・鎌倉などを含む全体枠で39億1900万円が計上された。

奈良新聞 2002.12.21 平城宮跡整備8億1500万円 大極殿復元10億円 財務省原案内示