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三内丸山遺跡の有料化をめぐって

■ 三内丸山遺跡2004年11月にも有料化

 青森県は12月18日、青森市の国指定特別史跡・三内丸山遺跡を含む「三内まほろばパーク」の有料化構想をめぐる検討懇話会を開き、早ければ2004年11月にも入場料徴収をスタートさせる意向を示した。県は縄文時遊館を含むパーク全域を対象に大人一人あたり400円程度の入場料を徴収する案を提示。試算では、実施後四年間で年平均3200万円の収益が見込めるという。入場料収入は、年間約1億9000万円の公園管理費の一部に充てる。

 縄文時遊館は、縄文ギャラリーや体験工房、飲食・物販、休憩スペースなどを備えたビジターセンターとして青森県が約40億円をかけて建設し、2002年11月に開館している。ところがその後、2003年3月に国の重要文化財に指定答申された三内丸山遺跡の出土品1953点は、遺跡内に設置されているプレハブ造の展示室や、県土木部都市計画課が管轄するビジターセンター「縄文時遊館」には常設展示できないことが判明。博物館機能がなく、重要文化財を安全に保管するための防災や盗難対策が十分でないというのが理由で、遺跡から離れた市内の県立郷土館で公開されることになった。

 遺跡内の展示室はいまだプレハブ造のままである。40億円かけた縄文時遊館は自由が利かない。それでも見学者からの料金徴収は実施ということである。重文指定の遺物を見るには市内へ移動して郷土館で入館料を払わなくてはならないから、三内丸山遺跡の見学者は二重に料金の支払いが生じることになりそうだ。使えない施設に使った40億円に対して、見込まれる遺跡入場料収入は年間3200万円。もっと計画的であれば、遺跡内での重文展示もできたはずだし、有料化もしなくて済んだように思われる。たかが数百円の入場料をケチるわけではないが、遺跡整備はお金をかけて何か施設を作れば人が来るというものではないだろう。遺跡を訪れる見学者が求めるものや、その遺跡の魅力を伝えるために知恵を絞った工夫の跡が見えるような遺跡整備であって欲しいと思う。

東奥日報 2002.11.30 三内丸山「縄文時遊館」オープン
東奥日報 2003.4.19 「縄文時遊館」国重文常設できず
東奥日報 2003.12.19 三内丸山遺跡来年11月にも有料化
東奥日報 2004.01.29 三内丸山遺跡有料化めぐり懇話会
東奥日報 2004.01.12 社説-有料化は究極の最後の手段- 


■ 三内丸山遺跡有料化を断念・隣接地の県立美術館で重文出土品展示へ

 三内丸山遺跡を含む「三内まほろばパーク」の有料化を検討してきた県は1月21日、遺跡から出土した国重要文化財(重文)を、隣接地に建設中の県立美術館(2006年7月開館予定)に展示した上で、パーク単独では入場料を徴収しない方針を明らかにした。同遺跡のビジターセンター「縄文時遊館」には重文を展示できず、遺跡内で重文が見られる−という料金徴収の“前提”が崩れたことが原因。今後は美術館と一体で誘客を図るため、適切な入館料金やPRについて検討を進める。

東奥日報2005.1.21 三内丸山遺跡の有料化断念/県