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前・中期旧石器発掘ねつ造問題についての声明


 2000年11月、藤村新一氏による上高森遺跡における発掘ねつ造が発覚しました。当会ではその翌月の第14回大会において、藤村氏の関与した「前・中期旧石器」時代遺跡の調査経過と出土石器の検討を行い、それらを基にパネルディスカッションを開催いたしました。この大会では、その後の検証活動についていくつかの方向性と方法が提示されました。会の終了後には、国内各地域の旧石器研究10団体との連名、および当会独自で今後の問題対応に向けての声明を発表いたしました。
 検証活動は、日本考古学協会および各県の考古学会、遺跡の所在する自治体、文化庁、かつての調査担当機関などによって、約2年半に渡って精力的に進められました。当会も、日本考古学協会などと協議して、公開討論会へ参加し、石器検証を合同して行うとともに、上高森遺跡・座散乱木造跡の検証発掘に参加してきました。また、第15・16回大会においてもこの問題を取り上げ、各遺跡の検証結果を報告していただく場を設けてきました。
 検証の結果は、藤村氏が旧石器を求めて活動を開始した1973年以降に関わった、ほとんど全ての遺跡・遺物がねつ造されたものであり、「前・中期旧石器」に限らず後期旧石器・縄文時代草創期の資料も全く学術的価値を持ち得ない、というものでした。「前・中期旧石器問題」に決着を付け、国指定史跡とされた座散乱木遺跡にも、その価値を認めることができず、指定解除という前代未聞の結果となりました。ねつ造行為は、考古学とその関連諸科学に計り知れない打撃を与えたと同時に、学校教育・社会教育・出版・行政などを含む社会全体に多大な影響を与え、考古学に対する社会の信頼を失墜させる結果をもたらしてしまいました。
 当会は、東北日本の旧石器研究の最新成果を速報し、あわせて研究者の情報交換を行うことを目的として1987年に設立されたものです。「前・中期旧石器」研究に対しては、発足当初から成果発表の場を提供し続け、結果として虚偽の情報を広める役割を果たすこととなってしまいました。このことが、ねつ造行為をさらに助長させ継続させたことも事実であり、会として深く反省し、お詫び致します。
 長期間に渡るねつ造を見抜けなかった原因については、調査方法や研究姿勢などに問題があったことが既に指摘されていますが、当会にあっては、新たな成果に対してそれを検証しようとする視点で、議論を尽くしてこなかった点に最大の問題があったと考えます。特に、最も基本的な遺跡での事実関係を、客観的な記録に基づいて確認しあう姿勢が欠けていたと考えております。
 当会は、今後も東北・北海道の旧石器研究の最新成果の公開を目的として活動していく方針ですが、今後はねつ造の再発を防止するためにも、より活発な議論をもって成果を相互に検討しあっていく所存です。またそうすることによって、誤った旧石器時代の歴史像を訂正し、社会に示していけるものと考えております。

 2003年12月6日
東北日本の旧石器文化を語る会世話人会