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仙台市沼向遺跡第10次発掘調査
現地説明会:2001.09.22  調査主体:仙台市教育委員会
 
 沼向遺跡は仙台市北東端の海岸部に位置している。これまで遺跡の実態は明らかでなかったが、土地区画整理事業に伴う1994年度からの発掘調査で、古墳時代前期を中心とする大規模な集落跡の存在が明らかとなった。遺跡東側の浜堤上には土壙墓、方形周溝墓、方墳からなる古墳時代前期から中期にかけての墓域が形成され、北側の後背湿地には古墳時代後期以前の3時期にわたる水田区画や水路跡などが形成されていた。東側では古墳時代前期・後期の縦穴建物跡と弥生時代中期・後期の遺物包含層も検出され、製塩土器などが出土している。

遺跡北西部の第9・10次調査区の遺構配置図。古墳時代前期・後期の縦穴建物跡が多く検出されている。3箇所の窪地状の部分で弥生時代から古墳時代にかけての遺物包含層が検出されている。

第9次調査区の完掘状況。古墳時代前期の縦穴建物跡が主体となっている。

第10次調査区の調査状況。中央左側が窪地地形。古墳時代の縦穴建物はこれを避けて配置されている。

古墳時代前期の縦穴建物跡完掘状況(第9次調査)と遺物出土状況。床面直上からの一括資料が多く、今後整理が進めば仙台平野における当該期の土器編年の指標となるとみられている。

まとめ
  • 古墳時代前期の居住域が確認され、これまで調査された古墳・方形周溝墓・土壙墓群と水田・水路跡などとあわせ、集落内の居住域・墓域・食料生産域が調査された例として貴重である。
  • 東西160m、南北80m以上に及ぶ居住域で確認されている縦穴建物跡は35軒にのぼり、関東や東海地方の影響を受けた遺物も残されていることなどから、古墳時代前期における七北田川水系の河口に位置する拠点集落であったと考えられる。
  • 古墳時代前期の縦穴建物跡床面直上の一括資料に恵まれており、仙台平野における当該期の土器編年の基準資料として注目される。
  • 奈良時代〜平安時代初期の畑跡とこれに関連する区画溝・縦穴遺構群・土坑群が検出された。
  • 弥生時代の土壙墓と遺物包含層が検出されており、集落が形成されていたと考えられる。
  • 今後の調査で古墳時代中期の居住域と後期の墓域が確認されれば、古墳時代から平安時代にかけての集落内の遺構配置や土地利用とその変遷といった具体的な生活環境を復元できる可能性が高い。
参考文献
仙台市教育委員会2001「沼向遺跡現地説明会資料」
写真と平面図はすべて仙台市教育委員会2001より引用した。