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艮櫓の再建位置について結論出せず両論併記

第9回仙台城石垣修復等調査検討委員会(最終回) 8月28日

 仙台城の石垣修復工事と艮櫓再建計画を審議する「仙台城石垣修復等調査検討委員会」(委員長・佐藤巧東北大学名誉教授)の最終会合が8月28日開かれた。
 艮櫓の再建位置について、各委員からは観光効果を重視した「現存石垣の北東角」と、史実通りに「古い石垣の上」とする意見があらためて提示された。仙台市の石垣修復案についても、「伝統技術を無視した考え方に近く、不十分だ」という批判と「安全性を考えれば補強は必要だ」と賛同する意見に分かれた。
 結局最後まで意見がまとまらなかったため、会合終了後、佐藤委員長は「各委員の意見とその根拠を併記し、9月中をめどに市長に提出したい」と述べた。このため論争となっている艮櫓の建設位置についての結論は事実上藤井市長の判断に委ねられた。
 仙台市は委員の任期が9月末で切れることや、工期の遅れが石垣の土台にダメージを与える恐れがあることなどを理由に、この日で検討委員会を終了させた。今後の石垣修復と艮櫓の建設にあたっては、個別に有識者に相談するなどして対応するとしている。
 仙台城本丸跡の石垣修復工事では、工事に伴う本丸跡北東部の発掘調査で現存石垣の内側から伊達政宗時代の2時期にわたる古い石垣が見つかった。艮櫓は再建が計画されている現存石垣上ではなく、古い石垣の上にしか建っていなかったことが分かっている。このため歴史学関係者などの「史実に基づき、古い石垣の上」とする意見と、商業関係者などの「観光効果を重視し、市街地から見える現存石垣の上」とする意見が対立している。
 委員会では異なる意見を主張する双方から「さらに調査検討が必要」との声があがった。また、以前から「会合の回数が少ない」などの不満の声が相次いでいたといい(河北新報)、仙台市が結論を急いだ感は否めない。
 今回の議論は艮櫓の再建だけでなく、仙台城の復元整備計画全体の理念に関わる問題である。艮櫓の再建そのものの是非も含めた深い議論が必要であったにもかかわらず、専門家が意見を出し合うのみで最終的な結論が両論併記とあっては、何のための検討委員会であったのかという市民感情を持たざるを得ないだろう。
 「市のシンボルづくり」を掲げる仙台市、「将来的な市民の立場も考え、最大公約数を目指したい」と話す藤井市長が私たちを納得させる結論を出してくれることを望みたい。