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レーダー探査で艮櫓再建予定地直下にも石垣ある可能性

東北大学東北アジア研究センター佐藤源之教授 9月6日

 仙台市の仙台城跡艮櫓復元事業で、東北大東北アジア研究センターの佐藤源之教授(地球工学)らが独自に地中レーダー探査を実施した結果、現存石垣の北東角近くの地中に未発掘の古い石垣が埋まっている可能性があることが9月5日、明らかになった。この場所は櫓の建設予定地の直下で、櫓の基礎となるコンクリート柱(直径2m)を立てる位置の近く。市は「櫓を建てる際には文化財調査を行う」としているが、今後の調査結果によっては計画の見直しなどが考えられ、復元事業の行方にも影響を与えそうだ。
 佐藤教授らはレーダー探査の研究の一環として今年7月下旬、未発掘部分の地中の様子を調べた。調査対象は現存(3期)石垣の内側から見つかった築城期(1期)石垣の上部約5メートルの斜面上。調査の結果、地表から1メートル下に、大きさ1メートルほどの「異物」が何個か並んでいるような波形が見られたという。
 「異物」の波形は横3.5メートル、高さ2メートルにわたって広がっていた。佐藤教授は「地下水や砂利の塊の可能性もあり、石垣かどうかは何とも言えない。しかし、これまでの探査経験や周囲の状況から、石の可能性はかなり高い」とみている。
 地中レーダー探査の研究で国内の第一人者とされる佐藤教授は平成9年から数回、仙台城本丸跡でレーダー探査を実施し、3期石垣の解体前の調査でも今回と同様の波形を観測。「恐らく大きな石がある」とみていたが、その後の発掘で、石垣内側から盛り土の土留めとされる大規模な階段状石列が見つかった。
 仙台城本丸跡では市が3期石垣の修復を進め、3期石垣北東角に艮櫓の復元も計画。修復工事に伴う発掘調査では、3期石垣の内側から1、2期の古い石垣が相次いで見つかった。
 市は「古い石垣の保存と櫓建設を両立させたい」(藤井黎市長)と、古い石垣を壊さないように柱の位置をずらした工法案を既に提示している。
 一方で、地元の歴史学者らから「古い石垣がまだ地中に残っている可能性があり、3期石垣の北東角では市の新たな工法案でも石垣を壊す恐れがある」との指摘が出ていた。
 須藤隆東北大文学部教授(考古学)は「地中レーダー探査は、考古学の分野でも重要な調査手法として有効性が認められつつある。周囲の状況と照らし合わせ、地中がどうなっているかをあらためて発掘で確認する必要がある」と話している。
<地中レーダー探査>地表の送信アンテナから電磁波パルスを放射し、受信アンテナで受信。送信電波が反射波として戻ってくる時間を計測することで反射体の深さを推定する。比較的新しい地中探査の方法で、電気探査や地震探査より浅い地点で、より小さい物体を探るのに適している。
[河北新報 2000年09月06日]