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緊急討論「仙台城石垣と艮櫓の復元をめぐって」

仙台郷土研究会 9月16日

 仙台郷土研究会が仙台城石垣見学会と緊急討論「仙台城石垣と艮櫓の復元をめぐって」を開催した。現地での見学会の後仙台市博物館で開かれた討論会では、はじめに仙台郷土研究会会長の渡辺信夫東北大学名誉教授から経過報告があり、前国立歴史民俗博物館館長で全国の史跡整備などに詳しい石井進氏が基調講演を行った。参加した在仙の史学研究者らは仙台市が進める復元事業の問題点を指摘、あらためて古い石垣の重要性を強調した。会場には市民200名が詰め掛け、活発に意見を戦わせていた。
 討論会に先立って開かれた現地見学会では、発掘調査で姿をあらわした3時期の石垣を前に仙台市の職員から説明があり、参加者らは石垣の重要性を再認識していた。艮櫓の基礎工事で打ち込まれる直径2mのコンクリート柱の位置を示した赤い目印が1期石垣のごく近くに示されているのを目の当たりにした参加者らは驚きの声を上げていた。
 討論会では「国史跡における建造物の復元は、発掘調査による遺構確認や設計図、古写真の存在などの具体的資料が必要」と石井進氏が発言し、一枚の絵図に頼る艮櫓復元の信憑性に対する疑問が提起された。在仙史学研究団体の大石直正氏、鈴木啓氏、菊地勇夫氏、ジョン・モリス氏、入間田宣夫氏、菊地慶子氏らはそれぞれの見解を提示し、「古い石垣の保存が第一。艮櫓の復元についてはじっくり検討し、場合によっては建てなくていい」などと述べた。参加者からは「古い石垣を守れず、史実に忠実な復元が無理なら、もう櫓は要らない」、「偽物の櫓で本物の貴重な石垣を壊さないで欲しい」などの声が次々にあがった。
 閉会間際に参加者の一人が「石垣こそが仙台城のシンボル。艮櫓は本当に必要だろうか」と発言すると、会場から拍手が湧き起こっていた。