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艮櫓、現存石垣北東角に復元

仙台市 11月14日

 藤井市長は「仙台城艮櫓復元事業の進め方について」を発表した。そのなかで「現存(3期)石垣の修復とあわせて、3期石垣の北東角に建設する」と決定し、現存石垣の内側にある古い石垣への影響を避けるため、基礎となるコンクリート柱の位置をさらにずらす。
 復元事業について藤井市長は「3期石垣及び艮櫓の安全性確保」と「旧石垣の本質的な価値の保全」を二大前提とした。あわせて、地中で櫓を支える直径2メートルのコンクリート杭の位置を、これまでの計画より1メートル〜1.6メートル南側(石垣の内側)に移した計画図を発表した。
 歴史学者らが史実に忠実であると主張する「2期石垣上」か、市街地からの見栄えを重視した商業界の「3期石垣上」かで論争が展開されていた艮櫓の建設位置問題に一応の終止符が打たれた格好だが、「史実に反する」と反発する歴史学者らの意見は根強く、将来にわたって仙台のシンボルとなりうるかどうかは不透明。最近では市民を中心に「議論に市民が参加できる機会が欲しかった」と議論のあり方を問う声や、「建設を急がず、時間をかけて検討すべき問題」などの声があがっていた。
 櫓の建設費は約20億円。市は2002年度末までに石垣の修復工事と櫓の基礎工事を終え、2003年度から櫓本体の建設に着手する予定。来年4月から艮櫓建設に先立ち実施するという発掘調査で新資料が発見された場合、計画の見直しを検討するとした。
 藤井市長は記者会見の席上で「仙台城復元の第一歩として、艮櫓をつくるべきだと判断した。2期石垣の上では石垣と櫓の一体性が確保できない。仙台藩の為政者がどういう城を築きたかったかも考慮し、結論を出した」と語った。これに対し仙台商工会議所の村松巌会頭は「大変歓迎している。観光の側面を期待しているのは否定しないが、仙台市民のシンボルとなることを期待している」と話した。仙台城跡石垣修復等調査検討委員会(1997年8月〜2000年8月)の委員長として復元計画に携わってきた佐藤巧東北大学名誉教授は「現実的な結論で納得できる。艮櫓なのだから艮(北東)の角。3期の北東角に立てる計画の絵図もある。そもそも2期石垣の上端はあくまで推定ラインだ」と話す。
 一方、仙台郷土研究会会長の渡辺信夫東北大学名誉教授は「非常に残念な結果になった。3期の上では史実に反する。十分な議論が為されないままの決断と言わざるを得ない。何のための検討委員会だったのかという思いだ。これでは、平成の城をつくることになる」と訴えた。
 市が復元事業の前提条件のひとつとしてあげた「旧石垣の本質的価値の保全」について「本質的保全とは石垣と裏込め石の保全。(艮櫓建設で破損することになる)玉石の価値は相対的に低い」とした藤井市長の発言にも疑問の声があがる。東北史学会会長の入間田宣夫東北学院大学教授は「3期石垣上への建設は歴史の捏造だ。石垣とは玉石など背後の構造を含めた全体を指す」と強調。「市の意思決定過程が不透明だ。追加調査の結果はどう評価されたのか。きちんと公開して欲しい」と述べた。
[河北新報・毎日新聞 2000年11月15日]