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官衙跡隣接地で住居跡新たに20棟
―職人集団の集落・工房跡の可能性―


仙台市太白区西台畑遺跡
―仙台市教育委員会(報道発表8月9日/一般説明会8月12日)―

 平成10年度からの調査で見つかっている7世紀中頃〜8世紀初めの竪穴住居跡約30軒に加え、新たに約20軒が見つかった。本遺跡の東側には、多賀城に陸奥国府が置かれる以前の7〜8世紀の官衙(かんが・役所)跡である郡山遺跡が隣接しており、仙台市教育委員会では郡山遺跡の役所跡と密接な関係のある集落であったことが明らかになったとしている。
 住居跡から出土した遺物の中に関東系の土師器が含まれていることから、集落の成立に際して関東地方との人的・物的交流があったと考えられるという。また、当時一般庶民があまり使用しなかった須恵器の出土量が比較的多いことや、当時の役人などが使用した円面硯と呼ばれる硯や漆が付着した須恵器のほか、銅が付着した坩堝など金属製品の製造を推測させる遺物もあり、集落が官衙の造営・運営と密接に関わっていたことが窺われる。
 郡山遺跡の官衙は中軸線の方向の違いなどからT期とU期に分かれるが、本遺跡の住居跡も同様に軸線の違いから2時期に分けることができ、官衙の造り替えにあわせて集落内でも計画的な住居の建て替えが行われていることが分かった。
 このほか、弥生時代の遺物包含層の調査では、弥生土器の壷や鉢、石鏃などが出土した。

郡山遺跡と西台畑遺跡の位置(左図):水色が西台畑遺跡、黄色が郡山遺跡の範囲。緑は郡山遺跡T期官衙、桃色はU期官衙と郡山廃寺跡。
西台畑遺跡の遺構配置図(右図・部分):見つかった住居跡は真北方向のものと若干東に振れるものの2時期に分けられる。


須恵器円面硯(左)          関東系の土師器杯(右)。


出土した特殊遺物(左):上段左から、漆の付着した須恵器、糸を紡ぐ紡錘車、フイゴの羽口、下段左から、銅の付着した坩堝、石錘、琥珀、雲母。
竪穴住居の炉跡(右):焚口から煙道までほぼ完全な状態で保存されていた。


弥生土器壷(左)                現地説明会風景(右)。

参考文献
仙台市教育委員会2000
「西台畑遺跡現地説明会資料-長町副都心土地区画整理事業に伴う発掘調査-」
仙台市史編纂委員会1995「仙台市史特別編2・考古資料」